海族便り~あぁ本州~

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マジでビビった!

本州へ向けて、強い風の中、帆を小さくしてコワゴワ海原へ。

2、3時間もすると風も僕も落ちつきを取り戻したので、縮めていた帆をバサッと大きく広げ鼻歌混じりのセーリング!

後ろから追いかけてくる優しい風に物足りなさを感じたのがマズかったのか!

風が、
「お前、物足りないって今言ったな!」
と、のたまったのはもちろん聞こえず、まだ鼻歌。

おやっ?
と思った時はもう手遅れなのは僕の人生で何度もある。
ブォッンと音がして風が唸った。
その後は容赦ない。
一気に風が強く荒れた。
鼻歌は鼻息ブンブンに変わる。
ヤバい、帆を縮めないと!

慌てて帆をおろすため船を風上に向ける。
維持するためにエンジンを駆けたのが間違いだった!

鼻歌セーリングで大きな魚も釣っちゃおーと淡い夢を見て、トローリング用の糸を引っ張ってたのを忘れてた!
慌ててエンジンを切る。

急いでトローリングの太い糸をたぐる。
ダメだプロペラにからまった!

どうしょう!

潜るか!
いや、この風でひとりで潜るのは危険だ!

落ち着いてるか?と自分に確認する。

でも、エンジンなしでこの風で港に付けるのはオレの腕では不可能だ。

どうする?

よし、潜ろう!

舵を放したため、帆がはらみ思いっきり傾く。足をガッツリぶつける。

まず帆を降ろさいとスゴい勢いで流されてく。
風上に船をたてられないから、帆がバタバタしてなかなか降りてこない。
「頼む、誰か手伝ってくれ!」
風が弱まるタイミングを読んで帆にぶら下がりながら引きずり降ろす。

どうにか降りた。

次は潜りだ!

転げるようにキャビンに入り水中眼鏡と包丁を持ってくる。

足ヒレを付けるか迷ったが、かえって邪魔になると判断。
素っ裸になって、水中眼鏡を付け包丁を口にくわえてザブン!

冷たい!一瞬だけ思った。
海を覗くと青い糸がスクリューにからまってるのが見えた。
船が流れる水流を感じてビビる。
が、いかねばなるまい。
よし、いける!
ヨットの後ろについてるハシゴから手を放す。
プロペラにからまった糸を包丁で切るがグルグルでガチガチになっていて一気には切れない。

水面に上がり一呼吸。大丈夫!
再び潜る。
メチャクチャに包丁をこすりつけ糸をむしり取る。
もう一度。もう一度。
とれた!一本も残らずに。
ハシゴまで泳ぐ!
ガシッとつかむ。
「あぁ、むかし水泳部でよかった」

ハシゴを上がりながら、ゆっくり息を吐く。
やりきった。
満足感が体を走る。
指を軽く切っただけでとくに怪我もない。
よかった。
と、ホッとしたのがいけなかった!

足を滑らし、マストのワイヤーとワイヤーの間にドスンと股間がはさまった!
痛い!
しかも全裸だった!
ヒィャッ!
っと叫んだろうか?
袋と内股に赤い赤いワイヤーのすれた痕が痛々しい。

今日の教訓
「全裸はやめよう」

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海族便り~玄界灘から響灘へ~

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夜明け前、午前4時を回ったばかり。空が白みだす時刻だ。

雨も濡れた匂いだけを残して上がってくれた。

いつからだろう、日本が島だと実感したのは。

ラパヌイ(イースター島) の兄貴が
日本のことを、
「お前の島」
と、いつも呼んでいた。

この感覚をポケットに入れて海を渡ろう。

さぁ、低気圧のしっぽに掴まって東へと!
風はまだ強い。
小さく畳んだ帆を広げ、
僕の生まれ育った島、
本州へ!