海族便り~函館港から下風呂港へ~

まさかまたトラブルに見舞われるとは誰が予想するだろうか!

そのぐらい津軽海峡は穏やかな朝だった。

朝の陽が眩しい。
離れ難い気持ちが詰まっている。

函館の港は優しかった。
出会う人みんな暖かかった。

街もお洒落で賑やかだった。
歴史もあり、華やかな街だった。

また、来よう。
三泊四日の短いが深い深い北海道島の滞在の記憶は美しい。

函館のみなさま本当にありがとうございました!

静かな海を渡る。
3日前から葦船の仲間のユウがアマナ号に合流している。
彼にとっては処女航海だ。

西からの風に帆を上げる。
ヨットに乗っているのに、最近エンジンがエンジンがと言い過ぎたよ、ホント。
僕らのエンジンは、風を受ける帆だ。
そう、もしかすると原点に帰るためのトラブルだったのだろうか。

流れる風にふくらむ帆は観ていて美しい。

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それにしても津軽海峡を流れる潮の速さは半端じゃなかった。
向かう方向より50度も東に舵をとる。
初めて舵を握るユウの肩に力が入っているのがわかる。

下北半島を渡りきったころに風が止まった。
直したばかりのエンジンをかける。
一発でかかった!
問題ない。
そうもった。

30分くらいたったころ、ふと排水が気になった。
少し少ないような気がする。

船に潜り込みエンジンルームのフタを開ける。

あぁ、水浸しだ!

冷却の為の海水がどこからか漏れている。
一本一本のホースを点検する。
穴は開いていない。
どこからだ!
どこから漏れているのか!

海の上での修理は可能なのか?
あふれる水をかきだしてみる。

わかった!吸水ホースのジョイント部のようだ。 原因がわかればこっちのもの。

エンジンを止め吸水の元栓を閉じる。

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2年前、初めての航海の初日にホースの破裂で水浸しになった。
一緒に乗っていたヨットの師匠田中さんがてきぱきと揺れる海上で直したのを思い出す。
今度は俺の番だ。
ホースの破裂はあれから2度直した経験がある。
インベラごと外してみると、吸水のホースを止めているバンドが切れていた。
幸い予備があったので丁寧に取り付けた。

エンジンをかける。
なに事もなかったかのようにブルルンルンと調子がいい。

うれしいのは、修理する事になれ始めていること。
壊れても直せる。
直せなかったらセールで走ればいい。
風がなければ待てばいい。

しげさんも、ユウも信頼してくれていた。

そして、事なきを得て下風呂港にちょっとだ け誇らしげに降り立った。

ここには白濁の素晴らしい温泉があるという。

三つの陽に焼けた男の背中が温泉街へ向かった。