海族便り~岩手県大船渡港より~

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朝靄に浮かぶ。

岩手県大船渡港は天然の港として長い長い年月を重ねているのだろう。
入り口は狭く、中に入ると四方をぐるりと山に囲まれていて、それまでの暴れた海がピタリと鏡になる。

広さも程よく風波も立たない。

世界有数の港に違いない。

ヨットを作業船につなげているとすぐに地元大船渡のヨットクラブの方が駆けつけてくれた。
クラブのヨット係留場につなぎませんか?と言ってくれた。
有り難い。
4艇のヨットが並ぶ岸壁につけさせて頂いた。

ただ、1m近く地盤が沈下したため岸壁が水 面ギリギリだ。
ヨットクラブの伊藤さんは、
「震災後に、ヨットがここに入るのは初めて ですよ。ようこそいらして下さいました」
と、顔をほころばせる。
僕らも、「大船渡港はまだ入れない」と聞い ていたし、復興中なのに失礼に当たらないかと思っていたので伊藤さんの言葉に肩の力が スーッと抜けた。

こうして、またヨットが入ってくるの時が来るのを待っていてくれていたのだろうか。
全ての方が伊藤さんと同じ思いとは思わないが、 やっぱりうれしくい。
「ホテルの日帰り湯があります。歩いては行けないので私の車で行きましょう。風呂から上がったら電話してくださいこちらまでまた 送りますから」

頭を下げて心の中で手を合わす。

八戸以来5日振りの大船渡の湯にドブンと浸かる。
こころの真ん中から骨の髄まで温まる。

「あぁ、この旅にでてよかった」

と思える瞬間を胸に抱く。

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